ライス10周年記念傑作選ライブ「スイップ」
2013/7/27 18:30~ 東京グローブ座
出演:ライス
待ちに待ったライス10周年記念特選ライブ、「スイップ」。
待ちに待っただなんてありふれた言葉じゃ言い表しきれない、そのくらい待ってたよ!
会場はグローブ座。普段はジャニーズのライブばかりやっているというその名前を聞いたとき、まさか?と思ってにわかに信じられなかった。収容人数も多いし、とってもいい劇場だし。
でも本当だった。グローブ座でやってくれてほんとによかった!
どの席からでも見やすくって、自分はそもそも見やすい席だったんだけど、そのこと考えるだけでも幸せになった。
同じもの見に行ったみんなが満足できるだなんて、そんな良いことほかにない。
その他にも個人的だけどいいことたくさんあった。
ライスやその周りの人々きっかけで出会ったたくさんのお友達に会えた。
会えただけじゃなくって、久しぶりなんてこと感じさせないくらい笑って笑って(心の中でちょっぴり泣いて)しあわせだった。今日は今日でしかないけれど、昔のいろんなこと今日につながってるし、今日のいろんなこと明日に続いてくんじゃないかって、そんな風に思えた。
それがライスのこんな記念碑的なライブで起こったってことも嬉しかった。きっと今日はほんとに忘れられない日になるんだと思う。
ライブ本編は、開催発表からさんざ話題になってた、二人のあの昭和チックな衣装でスタートした。
オープニングコント、というより、オープニングマイム?
テーブルに食事をセットする関町婦人(もとい「知姫」)、そこに現れる田所男爵(もとい「仁様」)、色んなことに失敗してはゲラゲラ笑い、すかさず社交ダンス。
聞いてても意味がわからないが見てるこっちはもっと意味がわからない。サイレントだし。
でもなんか衣装の奇抜さとマイムのうまさに笑っちゃう。つい吹き出しちゃう。
「10周年だな」
「ええ」
そうして流れるオープニングVとライブタイトル。
「スイップ」、スタート。
幕間の音楽。二人の同級生が毎回作ってくれてるというそれがずんずん低音で響く。ステージが明るくなると、真っ白な衣装の二人。
舞台の上手から怪しげなピッチングフォームを繰り出してくる関町さんが目に留まり、すぐに気づく。
1st conte「動きショップ」(第8回単独ライブ「カヴィ」より)
ピッチングフォームを繰り返しながら、少しずつ舞台中央に近づく関町。レジの前にある椅子にたどり着いたところで座り込む。店員の田所が気づき声を掛ける。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件で?」
「新しい『動き』が欲しいんです」
「かしこまりました。それではお客様が今お持ちの『動き』を確認させていただきます」
おもむろに関町の胸ポケットに手を伸ばす田所。
数枚のカードを取り出し、読み上げる。
「えーと、お客様がお持ちなのは、まず『物をつかむ』、それに『ポケットに手をいれる』、『座る』、あとこれは……!?」
きれいにまとまってるコント。途中ででてくるアクションが次々活かされて、最後も美しく終わる。仁さんのマイムと関町さんのコミカルな動きがほんと楽しくて!仁さん途中でくすっと笑っちゃうのもご愛嬌。
幕間は、二人のブロマイド風写真にあわせて、英語でコントの解説が。
いつのライブで初披露、こんなネタだから普通のライブではできません、そしてなぜかライスの悪口…??
英語もっとやっとくべきだった!はこの瞬間わたし含め不勉強な誰しもが感じたことと思われますw
続いては、スクリーンにゲームのオープニング風のタイトルが映し出される。
2nd conte「BOF~バトルオブファイターズ~」(第7回単独ライブ「コモク」より)
田所扮するボクサーと関町扮するいろんな職業の人との対戦。
対戦相手のラインナップが独特で、カンフー、農家、海女、常連さん、引っ越してきた隣人、童貞、喜劇王、農家再び。
ラストの逆転劇が秀逸、そしてハイコスト。
幕間の英語解説は変わらず。
またステージが明るくなると、今度はうってかわって黒装束に身を包んだ二人が現れる。黒いズボン、黒い長コート、黒いボストンバッグ。
似かよった衣装を身にまとい、舞台の左右に後ろ向きで立つ二人。
ゴソゴソとバッグを漁ると中身を取り出しおもむろに振り返る…
銃を持った男「手を上げろ、強盗だ!」
ウサギ耳の男「手を上げろ、変態だ!」
3rd conte「銀行にて」(第7回単独ライブ「コモク」より)
同じ日に仕事がかぶってしまった二人。戸惑う強盗に対し、「まあ全然方向性も違うんでお互い自分の仕事をやりましょう」と我関せずな変態。
仕方がないので強盗も脅迫を続けるが……?
ラストの仁さんの表情が秀逸。あそこまでいっちゃってる顔はそう出せない。
どうしようもない下ネタコントなんだけど、構成の妙に騙されてむしろポップといえるほど。
次のコントでは、再びスクリーンに映し出されるゲーム画面。RPGの戦闘風BGMが流れる。
「だいまおう は みをまもっている!」
「ゆうしゃ の こうげき!」
「だいまおう に 115のダメージ!」
「だいまおう は たおれた!」
4th conte「勇者とだいまおう」(第8回単独ライブ「カヴィ」より)
「だいまおう は たおれた!」
「だいまおう は たからばこ を かくしていた!」
「ゆうしゃ は 『だいまおう の てがみ』を てにいれた!」
舞台が明るくなると陳腐な衣装の勇者田所の横に、剣を突き刺され横たわる恐ろしいだいまおうの姿。
勇者はどれどれとだいまおうの手紙を読み始める。
……と、みるみる勇者の表情が不穏に。
「あなたがこの手紙を読んでいるということは、私が倒されたということなのですね」
「このような日が来てしまったことを残念に思っております」
そして明かされる、だいまおうの恐るべき真実とは……!?
救いのないオチのはずなのにどこかコミカル。ライスの「死」をめぐる多様さにはほんと恐れ入っちゃう。正確にいえば「死」と「エロ」かw
なんとなーくしんみりした気持ちのまま、次のコントへ。
5th conte「気絶まで10秒と11秒」(第2回単独ライブ「サボコ」より)
……このコントについては、しんみりを一撃で打ち砕く衝撃だったとだけお伝えしておきますw
リレーのバトンパスのコントだったんだけどね。連作の一部分というお話です。今回唯一、これだけ見たことなかったんだ。
気を取り直して、暗くなるステージ。
緩やかに流れる音楽に記憶をふっと呼び起こされる。
6th conte「スイップ」(第8回単独ライブ「カヴィ」より)
サイレントコント。
緩やかなメロディーに乗せて、白いハンカチを軸に、ある男の半生をえがく。ただそれだけ。
ちょっと不器用だけど誠実でまっすぐな人柄が仁さんの演技通じて伝わってきて、関町さんの一人二役との交流がほんと心に痛くて。
でもそれだけで終わらせないのがライスだよね。
なんでカヴィで初演なのにタイトル「スイップ」なの?っていうのがその答え。やっぱり今回もライブの核になるようなコントだったなあ。
「『後天性特定音域過敏症』、という病名はご存知ですか?」
「後天……特定……?」
「『後天性特定音域過敏症』。その名のとおり、特定の音に対して非常に敏感に反応を示してしまうというものです。有効な治療法はなく、現代の奇病と呼ばれています」
「え?そんな病気に私が?……それで、その特定の音というのは私の場合は……」
「ええ、その音は……」
7th conte「後天性特定音域過敏症」(第3回単独ライブ「キリ・バト」より)
普段のライブでもかけているので、もはやおなじみのこのネタ。でも単独ライブの一本として見ると、また違う感じがするもんだなー。
よくありそうな設定だからこその焦らす感じ、焦らされてからの意外さに笑っちゃう感じ、そして笑いながらの「おまえもか!」というオチ。
傑作選だからこそ、全部の単独から一本ずつ持ってきたかったのかな。前回大阪での己的好選では、キリ・バトからのネタはなかったので。
そして、関町さんの痛めつけられるネタ連投。
8th conte「イメージ」(第5回単独ライブ「ビリンバウ」より)
「さあ答えろ。アジトはどこだ?」
「知らねえよ」
「早く答えたほうが身のためだぞ。アジトはどこにあるんだ?」
「だから知らねえっつってんだろ」
「物分かりの悪いやつだな。こうなったら……」
拷問の最中、その様子を実演する代わりに、それを想像させるようなイメージ映像がスクリーンに流される。関町の悲鳴と観客の笑い声が会場いっぱいに響きわたる。
なかなか屈しない関町。そのたび拷問はエスカレートし、ついには……!
「この映像はイメージです。」お決まりのフレーズの醸し出す愉快さ!痛くてグロくて、なのになんで私たちこんな爆笑してるの?頭おかしくなりそう。
そんな感情引きずったまま、ライブはどんどん進みます。
怪しげな音楽に怪しげな文字で次のコントタイトルがスクリーンに映され……
9th conte「エロイ」(第1回単独ライブ「マフェ&バザバザ」より)
八年ぶりに故郷に帰ってきた関町を出迎える、幼なじみの田所。
「久しぶりだなあ、この街もけっこう変わっちゃったんじゃない?」
「えーたった八年だろ?全然そんなことないよ!」
「そっか、それもそうだな。おまえもちっとも変わってねーな!」
しかし、懐かしいはずの景色をたどって歩く彼の目に次々飛び込んでくるのは、まるで変わり果てた故郷の姿で……!?
タイトルに全てが書いてあるのに、それでも笑っちゃうのはなんでだろう?
キチガイ演じさせたら仁さんの表情にかなうものなんてそうはないし、怯える関町、逃げる関町、叫ぶ関町、どれも似合いすぎておもしろくって!
そうして続くのが、また違うキチガイの物語。
昭和チックでコミカルなオープニングテーマが聞こえてきたら、もうアレしかないでしょう。
10th conte「それいけ!シロッペ」(第4回単独ライブ「鈴虫のお腹」より)
田所演じる主人公のケンタくんはサラリーマン。いじめっこ上司のウシダンプには毎日こてんぱんにされ、憧れの女の子にも全く相手にされない日々。
そんな彼が毎回助けを求めるのが、未確認生命体のシロッペ。首を縛っていないてるてる坊主がぺっしゃんこになったような風貌。
シロッペはいつも体内から便利な道具を取り出して、ケンタくんの窮地を救ってくれる。と、みせかけて……?
シロッペ、なんていうか凶暴度が増しててとってもよかった……悲鳴よりも笑い声の大きい会場、さすが。これぜひシリーズで他のもやってほしいな。
音楽とともにきれいなオチがつき、次のコントへ。
教壇に机が一つ、よくあるセッティング。
11th conte「無知無知」(第7回単独ライブ「コモク」より)
「注目!今日からみんなと勉強することになった転校生を紹介するぞ!」
「関町知弘といいます。よろしくお願いします!」
「じゃあ関町の席はそこだ。関町、いいか、先生はお前のことを他の皆と同じ、ずっとこのクラスの一員だったように扱うからな」
「はい、ありがとうございます!」
普通に始まった教室コントがやがておかしな気配を見せる。けらけら笑う田所先生と生徒たちの横で、一人置いていかれる転校生関町。
彼が巻き込まれたとんでもないパラレルワールドの結末は、まるで予想もつかないところへ。
崩れ去った世界に呆然とする間もなく、舞台は暗くなる。
静けさが支配する中、まるで色のない衣装をきた二人が、舞台の上手に浮かび上がる。試合開始を告げるホイッスルが鳴り響く。
Last conte「攻めまして日米」(第1回単独ライブ「マフェ&バザバザ」より)
日本の、現代のどこか。とあるサッカー部に少年たちは所属している。
もうすぐアメリカの高校との親善試合が控えている。練習に励む彼ら。試合はもう目前だ。
かたや、かつての日本。どこかいなかの青年たち。
鳴り響くサイレンはまだ真空管の向こうの世界だ。しかし、それがいつ自分の身に降りかかってくるとはわからない。もしかしたら、その日はすぐそこかもしれない。
二つの戦が交差する。架空と現実、いや、架空と架空のお話だ。
そこでは同じもの、言葉、出来事がまったく違う意味を持つ。
質素すぎると馬鹿にされた日の丸弁当が涙ながらに有難がられて、場外退場を宣告する一枚の紙切れが彼を戦場へと導いた。
そして、膠着状態を示す「ゼロ」の響きがそのまま、彼の命運をかけた片道切符となる。
特攻を命じられた彼の行く先は決まっていた。
それでも上官は笑顔で、最上級の笑顔で彼を送り出した。
微動だにしない敬礼一つ、空に飛び出していった彼の、蹴飛ばしたボール。
それはゆっくりと見えない空に吸い込まれ、そして……
色のない衣装、形のない小道具、真っ暗になる舞台、流れるエンドロール。
ぱっと明かりが点ると、そこには目にも鮮やかな記念日の二人。そして、鳴り止まない拍手。
10周年記念の傑作選ライブが終わりました。
会場包みこんだ万感の拍手が全てを物語ってたなあ。
二人がお辞儀をしても起き上がっても止まなくて、ようやく関町さんが指揮者の身ぶりをして収まった。もしかしなくとも一番感動した瞬間だった。嬉しそうな二人を見てるのも嬉しかった。
「素晴らしい劇場でこの拍手……吉本関係者の方!みてますか!」
「あーずっと見てたい」
「みなさん……普段はどこに隠れてるんです?」
「なるほどみなさん財布の紐がかたくていらっしゃる……」
始まる前は、これ終わっちゃったら放心しちゃってこの先なに楽しみに生きてけばいいんだろう!なんて途方にくれていたけれど、終わってみたら、こんなライスに会えるなら私なんだってがんばれるなあってすごい前向きになっちゃった。
お二人の10周年に立ち会えて感無量です。
これからも、ずっと、見届けさせてください。
最後に、限定パンフレットを買いましたが最初の1ページで元とれました。
(ごちそうさまでした)
このときにはまさか、次の単独ライブが4年後になるだなんて、思ってもみなかったよ……。