やぎさんゆうびんはエモい、そしてファンレターの話

オリエリタリ

しろやぎさんから おてがみ ついた
くろやぎさんたら よまずに たべた
しかたがないので おてがみ かいた
さっきのてがみの ごようじ なあに

くろやぎさんから おてがみ ついた
しろやぎさんたら よまずに たべた
しかたがないので おてがみ かいた
さっきのてがみの ごようじ なあに

―童謡 やぎさんゆうびん

カニさんがこんなブログを書いていました。

童謡『やぎさんゆうびん』をご存知だろうか。 黒ヤギが手紙を食べちゃった旨を手紙にしたためるんだけど、相手の白ヤギも手紙を食べちゃって無限ループに陥るやつです。たぶん、この曲で生まれて初めて無限ループの概念に触れる人も多いのでは。 「このまま2匹は永遠に読まれることのない手紙を送り合い続け、結果郵便局がちょっと儲かるんだ...

これ、すごいすき!
やぎさんたちの状況を「獣性と理性が混じり合った状態」と形容し、それを山月記の主人公李徴に重ね合わせる。
この、意外なものどうしを掛け合わせて、すっきりした気持ちのいい論を展開するのがカニさん流なのですが、この記事でも余すところなくその才能が発揮されており、非常に楽しく、軽快に読めます。

ですが、わたしは「やぎさんゆうびん」と聞いたときに全然違うことを考えていました。
具体的にはこんなこと。

というわけでちょっと語ってみようと思います!
(どうでもいいけどツイート中「返事はなあに」ってちょっと日本語変だね!まあいっか。)

誰から来た手紙なら食べたい?

まず、誰かから手紙がくる。
その手紙を読まずに食べる。
これって、どんな関係の人から来た手紙だと思いますか?

  • 好きな人……いや手紙食べないよね。読みたいよね
  • 嫌いな人……いや手紙捨てたいよね。食べないよね
  • ダイレクトメール……、、、よっぽどお腹が空いてたのかな?

でもさ、もう一度よく考えてみて。
好きな人から来た手紙、読みたい?ほんとに読みたい?

いや、読みたいが100パーセント、というか200パーセントなのはわかってる。
でもその裏に、こんな気持ちはない?

  • これ、読んだら終わっちゃうな……(「これから読める」という楽しみをまだ残しておきたいな)
  • 当たり障りのないことしか書いてなかったら凹むな……(読まないかぎり「手紙をもらえた」という事実だけを幸せに抱えて生きていけるな)

わたしは、しろやぎさんから手紙をもらったくろやぎさんの心境って、ぜったいこの二つのどっちかだったと思うんですよ。
そんでもって、勢い余って、食べた。
食べた瞬間彼(彼女)は絶対、奇妙な感慨に包まれていたことと思う。

相手の生み出したものを自分の体内に取り込んだという征服感。
そして「これでまた手紙を書く大義名分ができたぞ」という欺瞞にも似た達成感。

彼(彼女)は返事を書きました。
「しかたがないので」と、まるで自分に言い聞かせるような枕詞を盾にして。

「さっきのてがみの ごようじ なあに」これもまた白々しい。

……だって、あなた読む気ないじゃない。
またきたら、食べてやろう、としか思ってないじゃない。

一方のしろやぎさんだって

ここで話が終わったら、ただの「くろやぎってやべえやつだな」で終わりです。
でもこの歌がすごいのは、当の手紙を出したしろやぎさんが、まるで双子のタンゴのように、そっくりそのまま同じ言動を返すところ。

無粋なのでしろやぎさんの言動を復習することはしません。
でもね、くろやぎさんから返事をもらったときのしろやぎさんの気持ちはちょっと考えてみたい。

ポスト覗いて、お手紙入ってて、超超超心臓がばくばくしたと思う。

「あ、やべ、返事きた、どうしようこの展開は予想してなかった(自分で返信ハガキ入れたくせにな!)、どうしようコレくろやぎからだよな、他にいねえもんな、でもまじでくるかよ、えーあいつってそういう律儀なとこあったっけ!!!???」

ここでしろやぎさんがちゃんと手紙を読んでたら二人の歴史は変わったのになあ。

「さっきのてがみの ごようじ なあに」

それ読んだら、しろやぎさん、固まって、天を仰いで、それから超爆笑したと思う。
ちょ、おま、それないだろ、って。
えーあれだけ気合いれて勇気ふりしぼって二人の関係終わらす覚悟で書いたのに、読んでないの!!??
いったい何があったらそうなるの!!??
え、盗まれたの?トイレに落とした?間違えてシュレッダーした?

……え、食べた?
食べたの?手紙??

爆笑して、許して、ちゃんと話して、なんかいいことあったと思うよ、それからたくさん。
でも、そんなifは、ifのまま。
だって、しろやぎさんも手紙、食べちゃったからね。

みんなはちゃんと手紙、読もうな!

わたしが応援しているオリエンタルラジオ(RADIO FISH)の中田敦彦さんは、手紙が大好きな人です。
具体的には、ファンレターに返信用の葉書を同封すると、達筆なお返事を書いて投函してくれます(ご本人が返信用はがきの同封を推奨しています)。

※2019.8現在、中田さんはファンレターの受け取りを辞退していらっしゃいます。期間限定のわくわく味わわせてくださってありがとうございました。

ポストに入ってるとけっこうどきどきします。
うわー何書いてるんだろ。
当たりさわりなかったり、めっちゃ怒られてたらどうしよう。

でもね、なんか、たぶん何書いてあっても嬉しかったり面白かったりするんだ。
そもそも、字がすごいかっこよくて!
そのまま額に入れて飾りたい感じなんですよ。本当に。

正直、手紙を書くのって、ブログの何百倍難しいです。
どんな風に受け取られるのかな、ちゃんと伝わるかなって、しかも悩んだ分だけ文章が良くなるわけでもなく。
でも、なんだろうなー。
中田スタイルを流用して、他の方にもお手紙書いたり、お返事もらったりしたんですけど。
なんかそうするとね、お互いの関係が「人と人」になる、というか。

アーティストとファンって、難しいことは何もないはずなんですけど、でも難しいことってたくさんあって。
特にこんなSNS時代というか、こちらの言葉がダイレクトに届く機会が多すぎる今だと。

相手を「アーティスト」「歌手」「芸人」として、『消費』するだけの態度って良くないなと思います。
だって彼らの人生だもの。
「応援する」「応援される」矢印の方向が違うだけ。
同じ時間を生きていることに変わりない。

手紙をちゃんと書く、そして相手の手紙(返事)をちゃんと読む、というのが、その一歩になる気がします。
というわけで、わたしはこれからも手紙を書くし、どんなに大好きな方からのお返事でも食べません。
しっかり読みます!笑って泣いて、自分の糧にいたします!

(しろやぎとくろやぎはエモいのが価値だからそのままでいてくれよな!)

勢いのままに書いたので、本稿全然まとまっていませんが、最後に、中田さんが前おっしゃっていた「ファンレターこんな感じだとありがたい」を共有しますね。

  • 字は大き目で!小さいと目が疲れちゃうからできれば1cm角以上!
  • 枚数は少なめで!たくさんだと大変だから多くて便箋2枚!
  • 「ファンレター」でお願い!批判はやめておいて!
  • 返信用葉書は絶対同封して!返事書きたいから!切手を貼って、自分の住所氏名を宛先欄にかいといて!

返信は、もちろん苦手な方もいらっしゃるので、できればご本人に確認したり完全にダメ元で、というのが良いと思いますが、それ以外は全ての方へのファンレターに通じる注意事項なんじゃないかなと思います。

お手紙、楽しいですよ。
みなさまも素敵な文通ライフを!