ライスネタコレクションライブ vol.4
2019/11/23(18:00~), 24(13:00~/17:00~) シアター代官山
出演:ライス/[MC]ピクニック/竹内健人
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ライスがひたすらコントをやる「ネタコレクションライブ」、4回目の今回は初めてオール新ネタとなりました。
これまでは全て過去のネタから選りすぐりのものをお届けし、後日YouTubeにアップするというコンセプトだったので「単独ライブとなにが違うの?」と当初思ったのですが、本人たちの気持ちの面で違う部分があったそうで(後ほど書きます)。
1公演につき7本、うち数本が日替わりだったため全部で10本の新ネタたち。
どれも、ポップで華やかで巧妙で、たくさん語りたくなってしまうライスがたくさん詰まっていました。
2日目のラスト公演に行けたので、どんなネタをやったかと感想を書きます。
ネタばれ含みますので、どこかで出会えるのを楽しみにしたい方は、回れ右をお願いします。
ネタと感想
タイトルは適当です。
1. 隠れ家的な料亭
近所に見つけた隠れ家的な料亭で、コース料理を楽しむ田所。
しかし、店員関町のあるふるまいが、気になってしまってしょうがない。
しびれを切らし「料理に集中できない!」と怒り出す田所。が、「待てよ?」と関町のその行動に一定の法則性があることに気づく。
己の仮説を証明すべく、関町を試しにかかる田所。どうやら思った通りである!と手を打ったのもつかの間……?
一本目は料亭の個室からお届けされるコント。
立て板に水のごとく料理の説明をする関町さんのよどみなさにしびれます。
途中、「その流暢な感じがむかつくんだよ!」と田所さんにブチ切れられるのも含めて(笑)
観客に展開を読ませつつ、変化球で笑いを増幅させる手腕が見事。
とても美しいこと、難しいことをやりながらも、あくまで関町さんのリアクションや天丼といったベタなボケで笑わされてしまう。
二人とも、年齢を重ねてきて、貫禄のある役がより似合うようになってきたなー。
あと、この題材、食に全く興味のなかった以前の田所さんなら作らなかったコントじゃないかな、と思いました。
2. いわくつき物件
この物件は極端に家賃が安かった。
理由の一つは、ここが事故物件であったから。前住人である30歳半ばの男性が首をつって自殺したそうだ。
理由の二つ目は、このあたりの治安が悪いから。最近押し入り強盗が多発しているらしい。
でも安さにあらがえず、僕はこの部屋を借りて住み始めた。
そして、事件は起こった……
二つ目は事故物件に住んでいる若者のコント。
しかし、ただの事故物件ではなく、「近所の治安が悪い」というおまけがついている。この設定の活かし方がライス。
事故物件をテーマにしたコントは数あれど、こういう展開のさせ方はライス(かトップリードか)くらいしかやらないんじゃないだろうか。
個人的に、このコントが一番好きでした。
関町さん演じる「侵入者」が喋り始めてからが真骨頂。
「え、そんなことって……?」とドキドキソワソワが最高潮に達してからの、「ですよねー!!!」というほっとした笑い。
でも、コントが終わってからも二人のストーリーが続いていきそうな、そんな余韻をほのかに残して。
あと、コントといえば台詞回しの巧みさが一番のキモになろうかと思うのですが、「ライスは地の文もうまいんだな」というのが、このコントでの発見でした。
冒頭、影マイクで関町さんが舞台となる部屋についてわりと長尺で話すのですが、その説明文がめっちゃわかりやすくてするする頭に入ってくるんですよね。
そんなところにも、妙に感動してしまった。
3. 「お約束」のやつ
とあるファミレスにて。おろしたての白いシャツを着た男が連れに向かって喋りかける。
「このシャツ、ブランド物なんだけどいくらすると思う?4万円!仕立てが良くて着心地も最高なんだ。いいだろ?この白さ」
その男の席の横を店員が通りがかる。手に持っているのは離れたテーブルから注文された料理。
男は喋り続け、店員は運び続ける。アイスコーヒー、カレーライス、チョコレートフォンデュにミートソース。
その時「すいません」と、男が店員に声をかけた。
「店員に客がクレームを言う」というテーマは、キングオブコント決勝戦でやったズボンが濡れてしまうネタと同じ。
客のクレームが理不尽きわまりない、という点までも一緒。
なのに、こんなに違うネタに調理されちゃうんだもんな。すごいな。
関町さんの喋りの技術も光ってた。
田所さんがセリフを言う間、関町さんはずっと「連れに話しかけている」というていで喋り続けているんだけど、その声の強弱、音量、テンポ、すべてが絶妙。
ちょうどよく気に障らず、ちょうどよく気になる感じ。
そういう技術の巧みさも見せつつ、その後のMCではコント中のセリフを引用して「轢けよ!」選手権をやりたいという話も出たのだけれど、そんなキャッチ―なポイント要所要所で押さえてくるのもライスのだいすきなところです!
4. 3万円
道端で立ち止まり携帯で電話する一人のサラリーマン。
会話の流れで財布を取り出し、中を確認しようとした瞬間、突如現れた男にその財布をひったくられた!
慌てて犯人を追いかけるサラリーマン。
何とか捕まえ、財布を取り返す。
しかし確かに入っていたはずの札が一枚もない。
「へっへっへっ、お前の3万円なら……」
こうね、トロッコ問題の思考実験的なというか、善悪のグレーゾーンを攻めてくる感じというか、そういうのもライスは得意だよなって思うんだけど、そんなネタでした。(どんな?)
ラストがゲス全開で終わる感じもよかったなー(笑)
5. 田舎のさびれた銭湯にて
銭湯の番台前で押し問答する一人の客と清掃員。
客は腰にタオルだけ巻き、どうやら風呂から上がったばかりといった風情である。
「そうは言いましても、決まりなもので……」
「分かってる。財布を盗まれたのもロッカーに鍵をかけわすれた俺が悪かった。それも認める。だけど、この状況はしょうがないじゃん?」
「ですが、決まっておりますもので……」
あの!このコントだけ、オチがよくわからなかった(笑)
最終的に客が諦めたってことなのかなあ。それでオチてるのかなあ。
なんかわたしが解釈できてなかっただけな気がする。
わかる人教えてほしい(笑)
オチわからなかった、ってアンケートに書いた方がよかったのかな?忘れてた!
6. 入院中の記憶喪失患者
「先生、僕はもう大丈夫です。退院させてください」
「いやいや、君の記憶はまだ完全には戻ってないんだ。病院を出すわけにはいかないよ」
「そんなことない、記憶はもう全部戻ったんです」
「じゃあ、テストをしてみよう。これをクリアしたら退院してもかまわない」
「ありがとうございます!」
「それじゃあいくよ。第一問目は……」
「治ったと言い張る患者」「まだ君は治っていないと言い張る医者」のコント。逆バージョンが存在するのでこれもまたライスのフォーマットなのかも。
力技で笑わせてくるんだけど、言葉遣いや台詞回しがいちいち面白いんだよなー。
「動物問題をよく出す関町先生」、ライスは動物好きだもんな~~
7. 山下ふ頭の倉庫のロッカー
「はい、関町さんは絶対一人で向かっています。ハイ、応援をお願いします。僕は到着まで関町さんを探します」
一人敵陣に乗り込んだ先輩を探しに、ふ頭の倉庫へやってきた後輩刑事。
いかにも怪しげなロッカーを見つけた彼は、勢いよくその扉を開けた。
するとそこには……
ラストにふさわしい(?)豪快で大味なコント。
どうやってオチるんだろうと思ったら、客席まで一体となるような盛り上がりが見事で、拍手喝采させていただきました。
関町さんの衣装があまりにもひどくて、着替えてくるかなと思ったらそのままラストのご挨拶に現れたので、そこまで含めて本当に可笑しかったです。
幕間のMCやそのほかいろいろ
今回もピクニック、竹内健人というライスを大好きな先輩二人がMCを務めてくれました。
わたしが観に行ったのはラストの公演だったということもあり、コントが一本終わるごとに二人が同じ芸人としての目線から「こんなところがすごかった」「こんな場面を見ちゃった」というのを語ってくれて、それがとても面白かったです。
例えば、あるコントで関町さんが金属バットを床におろすシーン、観客の気をそがないよう音を立てない工夫をしていたとか。
キーアイテムの時計を見せるシーン、より見せ方が映えるようにこんなことをしていたとか。
ライスはなかなかそういうのを教えてくれないので(単独「カヴィ」後にアフタートークをやってくれたときは聞けたけど)、貴重な話だ!と嬉しくなりました。
あと関町さんの声が良い、といういつもの話もあったんですが、神保町花月に彼の声量はもったいない(で、どこの劇場くらいだ、みたいな例えをしていたけどどこだか忘れた)ということを熱烈に二人ともおっしゃってくれて、それもまた嬉しかったです。
関町さん、舞台とか出てくれないかな。まだ見つかってないだけな気がするよ……
ネタの感想で「ライスは『地の文』もいい」というのを書きましたが、今までそういうネタがほかにあったかなあと考えて思い出したのが『パイプ椅子の歴史』です。
2010年のシュール5本ネタ公演で披露された、田所さん作のユニットコント。
カリカの林さんが「今から嘘の歴史をお話します」と始めるこのコントで、林さんは語り部をつとめるのですが、その口から紡がれる「パイプ椅子の歴史」は、ほんとにするすると上質な物語のようにわたしたちの中に飲み込まれていきました。
椅子コント、ラストのオチが恐ろしくも美しすぎたんですよね。
あれから十年近くが経とうとしますが、未だにほかには出会えていないので、いくら今日のライブが面白くても心の中でそんなライスを求めてしまったりもする、そんなわたしもいるのでした。
ネタコレクション、というくくりでオール新ネタを披露するというのは、単独ライブと違って一つ一つのネタの繋がりを意識しなくていいので、自由にのびのびできるそうです。
単独ライブと銘打つと、どうしても流れなどを考えその制約の中でネタを作ろうとしてしまう、と言っていました。
「次はどっちが見たいですかね?単独?ネタコレクション?」
「いやあそりゃあ、どっちも見たいんじゃないですか?」
ですね(笑)
そりゃ見られるものなら両方コンスタントに見たいですよ。
でも、無理してライブのためにネタをそろえるよりは、二人の気分にあわせて、そのときやりたいライブを楽しくやってほしいな、と思いました。
今回のネタコレ、とても面白くて幸せだったので。だから、そんな風に思えました。
思ったままをアンケートに書きました。
2020年もたくさん美味しいお米に会えますように。
<前回のネタコレ>