『甚雨』
14/5/27~6/1 神保町花月
脚本:長内英寿
演出:浅野泰徳(ジャングルベル・シアター)
出演:ライス/グランジ/とにかく明るい安村/タモンズ/TEAM BANANA/一ノ瀬文香/ウォンバット/どらまりん
ひどく降る雨―
心は濡れて赤く染まる。
久々の神保町本公演!ライスがいいよって評判きいて、オリラジトークの前だったこともあって行ってきた。
評判通りカッコいいところもゾクっとするところも笑いも涙もあったけど、ちょっと不完全燃焼だったかな……そこらへんを少し。
役名も「ジン」の、ライス仁さんが主人公だったんだけど、彼にのめり込むのに情報量が少なすぎるのが残念だった。自分を助けてくれた女医さんに恋をするまではまあいいとして、恋をする前後の彼の変化もわからないし、そこから遊園地に誘うっていうのが彼的に「らしい」のか「らしくない」のかもわからんし、そのよくわからん彼女がピエロに撃たれての死に際猛烈に喋るのもよく入ってこないし、彼女を失ってどのくらい絶望したのかも想像つかない。
さらに、彼女と出会って失ったことで彼は、殺さない「街の掃除屋」に転向するわけなんだけど、活動している中でシリアルキラーと化したピエロの動向はずっと見聞きしているはずで、だとしたら「自分がピエロに対峙したらどうするの?」って考えてなかったの?って思うのですよ。一思いに殺してやりたいのか、彼女とのお約束があるから殺さず更生させたいのか、殺さないけど死んだ方がましだと思わせたいのか、彼女が死んだのはもうどうしようもないからピエロなんて知ったこっちゃないよ、なのか。
もちろんね、彼女の弟である遠山さん演じるメルトンを人質に取られていたからってのはありますよ。でも、ジンとメルトンの絡み別になかったじゃん!って思うの。「メルトン…?はっ」て気づくジンの描写はあったけど、あれって「なんで姉貴を殺されたはずのお前が殺しも辞さない集団に寝返る?」という思いの方なのでは?「俺はこういう気持ちでここにいるんだ」ってのはメテオには語ってたけど、ジンがそれを知る場面はなかったし。それとも単純に、「ピエロだかメルトンだか知らないが人が死ぬのはもうたくさん!でも俺がここでどうにかしないとどっちかは死ぬ!どうしよう俺!」ってことだったのかしら。……その思考回路はあんまりスマートじゃないなあ。
まあなんにせよ一番の見所は関町さん演じるメテオでしたね!でもこれも言いたいことあるよー!彼の特徴は「万年下っ端」、「いじられ役」、「鬱屈」からの『狂気』ってとこだと思いますが、そこに至る経緯があまりにあっさりすぎたよ……描写されてもないのに「誰にも必要とされなかった」、「一度でいいから幸せになりたい」ってよくわかんないから!だって万年下っ端とはいえ、団の色んな人にいじられて楽しそうにやってたじゃん。メルトンとも仲良さそうにやってたじゃん。……とか言うと、「そういう人に見えないのにそうだったってとこがどんでん返しなんじゃないですかー!」とか言われるのかな。
でもさ、彼は虐待を受けたり虐められてたときに誰も見つけてくれなかったって言ってたけど、それでいうと「おテメチャン!」っていじられるのは虐められるに近いことだと思うんだけど、いじられてあの返しができてる人があの過去をそういう持ち出し方するのって無しじゃない?と思うんですよ。あの返しができてるなら乗り越えはできてなくとも何らかの整理はついてるんだろうし、そうじゃない!あのたびメテオは傷ついてたんだ!というのなら、狂気はもっと違う方角に向かっていた気がするんだよなあ。
あとね、わからないのが団長を殺した理由ね。団長は「メテオがいなくなったら幸せ」って言ったんでしょ?じゃあ、まだ幸せじゃないじゃん!殺しちゃダメじゃん!……ってこれも、「メテオは『殺したくないのに殺しちゃった』って言ってましたよ!」とか言われんのかね。そうかね。流儀に反したことしてフラフラしちゃってたから、いきなりピエロの仮面を脱ぎ捨てたのかね。捕まろうとしたのかな。いやそれは違うか、メルトンに庇われて嬉しかったからか。
というわけで、頑張って考えれば解釈のしようはあるんだけど、どうにも違和感多くて疲れたなあ!という感想でした。好き勝手書き散らして申し訳なかったです。
っていうかあれだね、たぶん私が偏ったライスファンだからだよね。「ライスは二人で一つ!」、「お互いより女優さん優先するなんて許せない!」、「どこにもそんな描写がなくても二人は二人が一番大切なの!」とかいうキモいファンだからですね!本当にごめんなさい!あとあれだ!雨降ってると、雨音きこえると「雨プラネット砂ハート」思い出しちゃうんです!あのライス素敵すぎたなとか無意識に思い出しちゃうんです!
というわけで(にどめ)、精神の安定のために誰にも需要がないと思うけど、「偏ったライスファン的にはこんなライスが好き!(甚雨ver.)」を披露して終わりにしたいと思います。完全妄想なのですみません。
①相討ち系
ピエロの仮面をぬぐメテオ。
駆け寄るジンに、「ああ、君なんだね」、ぽつり呟く。
「お前、だったのか」
「そうだよ、僕が皆殺してあげたんだ。だって、みんな『幸せだ』って言ったから。幸せな気持ちで命を終える、これ以上の幸せがあるわけない。僕が、皆を幸せにしてあげたんだ」
気の狂った台詞を吐き、メテオは笑う。しかしジンは動じない。
「……俺がなぜ殺しをやめたか知ってるか?」
「知らないよ。どうしてだい?」
「彼女が殺された時に、わかったことがあったからだ」
首をかしげるメテオに銃口を向け、ジンは宣告した。
「……彼女を殺した奴以上に、いや、奴以外に、殺される価値のある人間なんて一人もいない」
どす黒い穴を真っ直ぐに向けられながら、まるで死の淵にいるとは思えない微笑をメテオは浮かべた。
「ねえ、」
「何だ」
ぴくりとも手元を動かさず、返事をする。
「……幸せかい?」
「ああ、幸せだ」
ジンは即答した。
「なんてったって、人生最後の瞬間にお前を殺れるんだからな」
ぱん、二重に乾いた音がした。
『……ああ、僕を殺してくれるのは、君なんだね。』
②お互い分かり合えたのに系
ピエロの仮面をぬぐメテオ。
ジンは初めて見たその素顔に「君だったのか…」とぽつり呟く。
エスナが死んで以来、人を殺せなくなったジン。「殺せない掃除屋」の役割に限界がある中、汚れた街の粛清を進めていたのは、憎きはずのピエロだった。二人は、一枚のカードの裏と表だったのだ。
「幸せな瞬間に死ねるのが一番幸せだと信じてたんだ。でもあの日殺した彼女に駆け寄る君を見て、幸せと同時に大きすぎる絶望を生み出した自分の罪を思い知った」
「だから、『望まれる死』を積み重ねた?」
「そうだ。でも、それも今日で終わりだ。だって僕が一番望んでいるのは、いちばん最初に罪を犯した僕自身の『死』、なんだから」
さあ、彼女の仇をうってくれよ。
そう笑うメテオに、ジンは銃口を向け、
ぱん、乾いた音がした。
スローモーションで倒れる影に、ジンは寄り添うように近づいていく。そう、まるであの日と同じように。
「人って間違いながら生きてくもんだろ、俺も、お前も。俺は何度も間違えた。お前なんて、たった一度間違えただけだ。それなのに、たった一度だけだった、のに」
……どうしてそれが、こんなに決定的な間違いだったんだろう、な。