10/1/9 神保町花月『kisskisskiss2010』

 『kisskisskiss2010』
 10/1/6~11 神保町花月
 脚本:カリカやしろ
 演出:カリカやしろ
 出演:平田敦子/安達健太郎(カナリア)/チーモンチョーチュウ/ブレーメン/ジャングルポケット

いや、度肝は抜かれましたw後ろのほうの席でよかったー。
確実に隣りの席の人には変態扱いされたと思うけど。覚悟してたのにびっくりしたことにびっくりした(笑)
キスの流れ星が降りました。やたらポップな星のライトに招き猫の陽気なピンクが合わさって、ごちゃまぜのごっちゃ煮の不思議な空間でした。女装男子が三人もいて、安達さんは無駄に男前だった。
これをどう解釈せよというのか。ここまでシンプルなお話が書けるやしろさんはすごいなと思います。デブスでもてない三十OLが、何の因果か不思議な力を手に入れる。それは、彼女の好きな男性が、彼女が彼のことを好きでいる間、自分を愛してくれるようになる、というもの。今まで恋愛一つしたことがなかった彼女は、たくさんの男性から降るキスの嵐に呆然としながら、恋とは何か、愛とは何か、考えこんでいく。
「最初は愛されるだけで幸せだと思ってた。でも違った。愛されるからこそ苦しくて、愛されるからこそ不安になって、愛されるからこそ嫌いになった。愛ってなに?キスって、なに?」
悩んで傷ついて魔法の力を捨てようとしたとき、彼女に愛を告白しにやってきたのは、会社の同僚の冴えないメガネ男子だった。
「なによこれ?私の魔法は、私が好きになった人にしか効かないのよ?」
「魔法ってなに?そんなことは置いといて、告白の返事をくれないかな」
仕事で困ったとき、後輩OLにいじめられたとき、初めての愛に悩んだとき。
いつも隣りでとぼけたことを言っては慰めてくれたのは、ちょっと変わり者の彼だった……
ストーリーはそんな感じなんですが、見ながら「これ書いたのは家城さん」ってことについてずっと考えてしまいました。
最初の男、上司福田(チーモン菊地)は浮気男。
二番目の男、バンドボーカルのアキラはヤク中男。
最初のやつはまあいいとして(家城さんこんな恋愛してたのかしらとかはずっと思ってたけど)、ヤク中はだいぶね。タイムリーというかクリティカルヒットというか。
なんだろうなあ、芸術のためにどこまで犠牲にできるかという話、犠牲という言い方もおかしいな、どこまでささげることができるかという話は、そりゃあ古くから芥川の地獄変からあるわけで、みたいに思っちゃったりもするのだけど、たぶん家城さんが言いたかったこともそこまでずれてないんじゃないかと。
まあ神様も人間にずいぶんとめんどくさい脳みそを与えてしまったものだよね。
三番目の男、ヒーローのガモン(ジャンポケ斉藤)と、四番目の男、作家のコウ(安達)が言ってたこともずいぶんと深いものでした。
「君は僕のもの、でも僕はみんなのもの。君はみんなのものを独り占めしようとしているの?」(ガモン)
こんなの現職の芸人さんが言わせるかね!と(笑)
いやはや色んな文化があるのは知ってますし、それに染まる人もいればもちろん拒絶するひともいるのだろうけど、真っ当な人間どうしの関係だったら何らかの感情的あれこれがあるだろうなとは常々想像してたので、そんなところを重ね合わせてしまった。蛇足極まりない下衆の勘ぐりですね。私はどちらかといえば芸人さんだろうがまるで二次元のようにうすっぺらく平坦にしてしまいがちなので、そっちはそっちで悪い癖だなあとけっこう反省しているのです。
コウさんが語っていた「新作」は、ただただ興味深い話だった。
「君が誤って僕の目に指をつっこんでしまい、僕が失明したとする。僕は失明のショックさえ乗り越えれば、見えなくなったことで見えるようになった新しい世界に向かって、立ち直っていける。でも加害者の君は?僕は立ち直っている、君を責めていない。法律上君は、自分で思うよりも軽い罪しか背負わないだろう。その時君はどう思う?君が真面目であればあるほど、罪の意識にさいなまれるんじゃないだろうか」
脚本はあて書きだったのかな、と思います。
OL三人衆の名前なんて、しら子、たけ美、おたえ、だし(白井、武山、太田)。
でもそれ考えると、何で菊地さんの役名『福田』よ!ってなります。よけいな影が頭の中をちらちらしたぜ。
たけ美ちゃんとおたえちゃんは最後男性の格好をして、平田さんとちゅーしてました。白井さんだけは最後まで女の子のままだった。
女の子になった白井さんは、最初から最後まで、「福田さんが好きなの」とただただ語っていた。最後には平田さんとの確執も呆然と忘れてしまうほどに。
浮気男の菊地は、横領がばれてつかまった牢獄の中で、「毎日きてくれるのは、しら子ちゃんだけだよ。ありがとう」と言った。
この二人は絶対うまくいかないのだ。男は後悔はしても反省はしない。
最初、菊地さんと平田さんのシーンでは、「しら子ちゃんなんて本気じゃないよ!だいたい声が高すぎる!それに嘘はつくし……」とだいぶ白井要素を取り入れた回答でこられたので、ここはそういう扱いなのかと思いきや、予想外にラストにつながってしまったのでどうしようかと思った。
けっか、たくさん笑ってたくさん驚いて、良いお芝居だったということです。
しかしなぜ会社はつぶれてしまったのだろうか。
エンディングトークでは、平田さんに子ども扱いされ、軽くあしらわれる安達さんがとてもよかったですw
白井も始終きゃぴきゃぴしててよかった。そういうとこが好きなわけじゃないけどさ。

コメント

  1. もっちい より:

    お久しぶりです!
    本年もよろしくお願いします(遅)
    作家やしろ×チーモンと安達さんっていう、なんだか「陰と陽」な感じがどうなるんだろーってめっちゃ気になってました。やしろさんの創り出すものにはいつもドキドキしますね。台詞がまた良い!!
    6月の単独が待ち遠しいですねー★

  2. kagari より:

    >>もっちいさん!
    お久しぶりです☆こちらこそ新年のご挨拶もせずに…スターだけふらせてしまってスミマセン(笑)
    ライスの60分コントとかほんと見てみたいですよね!
    今年もよろしくお願いします^^
    今回のkisskisskissは、すごいポップな演出の下に、家城さんの陰陽様々な主張がうずまいてる感じでしたー。
    すっごいシンプルなストーリーなのに、色々考えさせられちゃったのは、役者さんの演技とか色々あるんだろうなあ……
    単独私もめっちゃ楽しみです!