『雨プラネット砂ハート』
2010/3/30~4/4 神保町花月
脚本:福田晶平
演出:足立拓也(マシンガンデニーロ)
出演:ライス/ジューシーズ/少年感覚/京本有加(中野腐女子シスターズ)
止まない雨。窓の無い部屋。 子供たち。出るための条件は一つ。 「大人になること」
4/1と3日の二回見に行ってきました。
たくさん語りたくなってしまった公演だったので、そのために記憶の更新がしたかった。
とても評判の良いお芝居で、公演が始まってからチケットも全部はけたし当日券もたくさん出てたし、何より「ライスが良かった」という声をほうぼうから聞けたのがとても嬉しかったです。
いつもの通りハードルはがんばってぐぐっと下げて行ったのですが、ハードルをなぎ倒す、いや放り投げるような勢いがありました…
一体あの魅力の源泉はなんだったのだろう、模索中。
ストーリー
舞台中央、泣きながらうずくまるコーイチ(ライス田所)。
「ちくしょう、なんでこんなことに」
「どうしてなんだよ」
「俺は、忘れませんから」
油をまき火をつけ、立ち去る。
近未来、日本。
窓のない箱のような一室で暮らす子どもたち。生まれてからこの部屋を出たことはない。
ずっと降り止まない雨の音。
雨の音に囲まれ、子どもたちは育ってきた。
- カイ(ジューシーズ 児玉)
- ナオト(ジューシーズ 松橋)
- タイキ(ジューシーズ 赤羽)
- ガク(少年感覚 向坂)
- リョーコ(京本)
彼らの部屋にやってくるのは三人の大人だけ。
- シュージ(少年感覚 久松)
- アンゴ(ライス 関町)
- コーイチ(ライス 田所)
シュージはもともとは子どもだった。
三年前にコーイチ、アンゴから「大人になること」を言い渡され、大人になった。
子どもたちは今の生活に不満を抱いている。
アンゴやシュージが持ってきてくれる本には外の素晴らしい世界について色々書いてあるし、何より毎食の豆のスープが不味い。
自分たちの生活にはルールがたくさん課されているにも関わらず、大人の一人、コーイチは自分勝手に行動してちっともルールを守ろうとしない。
シュージが大人になって三年、もう十八歳の自分たちは彼が大人になったのと同じ年頃。
「そろそろ誰か大人になれるんじゃ」
「はやく大人になって外の世界を見たい」
期待と不安はつのる。
その中でカイだけは、他の子どもたちとは少し違った不満と苛立ちを抱えていた。
三年前、まだ子どもだったシュージから、ナオトとカイはある計画を持ちかけられた。
「コーイチに、復讐しないか」
カイもナオトも知らなかった事実。
昔、ここにはもう一人の大人がいた。
「ナナミさんという人で、カイ、お前の実の母親だ」
「…はは、おや」
「彼女は、コーイチ、に殺されたんだ」
部屋を脱出し、コーイチに復讐する計画を伝えたその翌日。
シュージは大人になった。
大人になったシュージは復讐のことなどさっぱり忘れ去ってしまった。
コーイチとアンゴの元で毎日せっせと働くだけ。
話を聞いてもはぐらかすばかり。
カイの元に、コーイチから盗んだという、ナナミさんの写真だけを残して。
写真を見るたび、未だかつて、そしてこれからも見ることのない母親への思いが膨らむ。
ある日、カイとコーイチの確執がついに決定的なものとなった。
理由もなくカイにつらくあたるコーイチに対して、とうとう。
「…大人って、なんなんだよ」
「大人は自分に対して責任を取れる奴のことだ」
「じゃあお前はどう責任取るってんだよ、……俺の母親を、殺した責任を!」
子どもたちは部屋からの脱出計画を練り、一方コーイチは帰れぬ旅に出る。
ガクが大人になる儀式のさなか、子どもたちはシュージから部屋の鍵を奪い取り、部屋を飛び出す。
大人たちが暮らす部屋にたどり着き、
窓を開けたそこに見えた景色は、
『砂』
そして、スピーカーのスイッチが切られて止んだ『雨』。
……アンゴがとつとつと語る真実。
地球への隕石の衝突、気候変動、未知の病。
滅び行く人類、守られた私たち、ここは外界から閉ざされた、シェルター。
「ナナミさんはウイルスに感染した。立ち上がれなくなって、動けなくなって、それでも自分は感染源になるまいと」
「コーイチに、殺してくれ、と、頼んだんだ」
舞台中央、泣きながらうずくまるコーイチ。
「ちくしょう、なんでこんなことに」
『『ごめんなさいね。あなたに、こんなことを頼んで』』
「どうしてなんだよ」
『『私のことは忘れて。子どもたちを守ってね』』
「俺は、忘れませんから」
油をまき火をつけ、立ち去る。
感想
とまあこんな感じでした。
あの、お芝居に関していえば、はっきりいえばツッコミ所も山ほどあったし、ご都合主義出すなやとも何度も思ったのですが、それでも妙な中毒性があったなあ。
ライス二人の演技がとにかく良くて、田所さんは性格が悪くてまあ言っちゃえばドS仕様の田所仁だったわけですが、本当は優しい人っていう設定で。
そのギャップがねーほんとにブレずに混じらずに良かった。
一方の関町さんは子どもたちに慕われながら、でも田所さんを心配する気持ちもあり、の悩みどころが多いとっても難しい役どころだったと思うのだけど、こちらも見事においしいところをがっつり持っていってくれまして。
あの、笑い所とそうじゃないとこがきっちり分かれてて、これも普段関町さんのコスさにヒヤヒヤさせられてる身からするととても良かったです(笑)
演出が良かったーエンゲキ的だったーというのは見に行った方やら色々から聞いたのですが、私自身はあまり感じるところもなくて、というのはこれ二回見に行って思ったんだけど、あまりにマッチしすぎてて自然だったから気づかなかったっていうのと、単純に田所仁しか見てなかったっていうのの二要因あるなw
タイトルの出し方やら場面転換の仕方やらもそうだし、とくにラストシーンのナナミさんの声なんてもう……ばか!って感じで(笑)
非常にぞくぞくしました。
かなしくてきれいでとても興味深かった。
あー書いてたら出発する時の仁さんの笑顔思い出してすごい泣きたくなってきた。
仁さんもウイルス感染しちゃってね、まだ動けるうちに、って旅に出ちゃったから。
目線の使い方が、もう。あれ見て惚れない人っているの?って感じです。
あのね、たぶん、なんだろう。
SF的な世界観とか密室とか閉じられた世界って、だいぶ使い古されたネタであるから、そこをまぜこぜしたところが時代観をかき回してしまったと思う。
「隕石衝突」「未知のウイルス」「核シェルター内の閉じられた世界」というキーワードから想起される観客のイメージに説明の骨組みがまかされてしまったことが残念だったかなあ。
『世界観』というものがとても好きなので、そこの構築を脚本内でしっかりやりきって欲しいと思ってしまいました。
だからこそ、なのだけどね。
子どもたちの両親は「シェルターに入らないことを選択した」そうで、じゃあなぜ子どもたちと離れ離れになる決断をしたのだろうとか、「二人にとってもナナミさんは母親みたいな存在だったはずなのに」と語られるナナミさんとアンゴとコーイチの関係性はいかほどのものなのかとか、カイに「俺と似てる」とつぶやいたコーイチの過去はどうなっちゃってるのとか、そもそもシェルターに入る前はみんなは普通の地球で普通の生活をしていたはずでその頃やシェルターに入ってからや極限状態に突入してから三人はどやって子どもたち守ってきたんだろうどんな風な関係を築いてたんだろうとか、色々考えてしまうわけですよ。
考えても意味ないのにね!
今まで神保町へお芝居を見に行って、いちばん「心」がきたのは、『かつての意味』ラストの押見さんなわけです。
これはもう、今思い出しても涙が出るくらい、揺るがないわけです。
彼は、自分を思ってくれる人がいながら、もう二度と会うことのできない死んだ妻に、思いをとらわれていた。
「彼女が死んだ」は文字だけの意味しか持たず、彼はそれを受け入れることができていなかった。
芝居の中では普通の人だった彼が、実は「壊れていた」ことを知って、私はがくがく震えて、しばらく客席から立ち上がることができなかった。
そこまではいかないのだけど、それほどのものがあってもおかしくないと思うのです。
仁さんも関町さんも、ナナミさんに心のどこかをぶっ壊されちゃって、持ってかれちゃってる。
それは、仁さんが病気を治して帰ってきた、一見ハッピーエンドなラストにおいても揺るがないと思うんです。
だって、生活ってその一瞬じゃないから。
それからずっと続いていくものだから。
一度できたほころびは、周りを腐食しながら、どんどん広がっていく。
……うおう語りすぎた、おしまい!
コメント
えっと、お久しぶりです、といっても覚えていらっしゃらないと思うのですが 笑
だいぶ昔にコメントさせていただきました、凛歌です
雨プラネット砂ハート、私も見に行きました!
いろいろな都合上、一度しか見に行けませんでしたが…
私も、隕石が衝突してから今までの時間何があったのか非常に気になります 笑
個人的には、OPにナナミさんの台詞が入ったところがとても好きでした
コーイチの背負ってるものが分かった上であのシーンを見るともう悲しくて悲しくて
かつての意味の押見さん、未だに忘れられません
あれを見るまで、結構普通の役だな、と思っていたので、とんでもない衝撃でした
レポ、上手いですねー…
ぜひぜひ見習いたい…!
いつもいつもありがとうございます
なんだかぐだぐだしちゃってすみませんorz
乱文失礼致しました
>>凛歌さん
おひさしぶりです!
前回頂いたのを見てみたら、ライスのスクールで伊豆(あれ…誤変換ではあるけれどどことなく正しいような気がw)のときでした。
いまだに懐かしくって思い出すだけでわくわくしちゃうライブです。
またメッセージくださってありがとうございます^^
雨プラ、オープニングとラストのかぶせぐあいは本当に見事としかいいようがないですよね…
大好きなブロガーさんが「子どもたちがコーイチの気持ちを共有したみたいに感じた」と書かれていて恐れ入ってしまいました、本当にその通り。
また見てみたいシーンの一つです。
うわあそして『かつての意味』押見さんも共感していただけたとは…!
やっぱり、あそこはいろんな人の心に何かを残していたんですね。
レポ、久しぶりに書いたのでがんばりすぎてしまいました(笑)
ほんとに主観だらけだし記憶による捏造が多すぎるし、上手いなんてことはないのですよ、お恥ずかしいばかりで…
でも喜んでくださってる方がいると思うととても嬉しいです。ありがとうございます!
コメントの一つひとつが力になってます。感謝です^^